Story2 MOROTSUKA

宮崎県諸塚村のどんぐりの木。太くなり過ぎて、
椎茸栽培のホダ木として活用できなくなったこの木が、
「諸塚の森を再生する家具」へと生まれ変わる。

諸塚のコナラと杉

伐採した木に葉をつけたまま蒸散させ、山で一定期間置く「葉枯らし」乾燥をさせた諸塚の杉は、芯の渋が抜け、材は淡紅色であたたかな表情を持つ。コナラやクヌギは伐採しても萌芽更新を繰り返し、治山の役割を果たす。

諸塚村の森をつくる家具

産 地:諸塚村(宮崎県東臼杵郡)
製材所:耳川広域森林組合 諸塚木材加工センター(諸塚村)

置き去りにされた諸塚の広葉樹林。

全国の品評会で何度も優秀な成績を収めている宮崎県諸塚村の原木椎茸。樹齢20年近くに育ったどんぐりの木(クヌギやコナラ)を山から伐り出し、その原木に植菌し、二夏過ぎる頃まで人の手でこまめに椎茸菌の世話をする。手間のかかる原木椎茸の栽培も、年を追うごとに後継者不足に直面、さらには椎茸価格の低迷も重なり、本来は適正な時期の伐採と植林による更新が必要などんぐりの森では、新たな植林が行われないところが増えていきました。椎茸産業と共に森が育ち、森から新たな恵みをいただく。そんな自然を活かす好循環の森が置き去りにされつつありました。

「諸塚村どんぐり材プロジェクト」始動。

この状況をどうにかしたい、大きく育ち過ぎたどんぐりの木を有効に活用したい。そんな相談があったのは2009年の夏。通称「どんぐりプロジェクト」は、国際環境NGO・FoE Japanからワイス・ワイスにかかってきた一本の電話がきっかけで動き出しました。

諸塚村は、とても先進的な村だった。

九州山地の中央に位置する諸塚村。林野率95%のこの地域は、明治期の1907年に「林業立村」を宣言、村民総出で森を育てて暮らしてきました。そして2004年、自治体ぐるみとしては日本初となる、FSC®森林管理認証を取得。諸塚村は、村民の小さな子どもからお年寄りまで皆がFSC®について語ることができる、まさにSDGsを実践している村だったのです。連絡がきた2009年はちょうどワイス・ワイスがフェアウッド、国産材での家具製造へシフトした時期。互いの熱い思いが重なり合い、プロジェクトが本格的にスタートすることになりました。

※FSC®森林管理認証について
FSC®とは、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的に設立された国際的な非営利団体。FSC®森林管理認証は、森林を責任ある持続可能な方法で管理していると認められたもののみが取得できます。 (「MOROTSUKA」はFSC®認証商品です。)

開発を進めて実に3年、ついに。

宮崎空港から車で3時間。到着して何よりも驚いたのは、モザイク林の美しさでした。
木は森から伐り出してすぐに家具にできるわけではなく、伐採した木を挽いて、自然乾燥させ、それをさらに人工乾燥にかけてはじめて家具用材として使えるようになります。当時、諸塚村のどんぐりの木はもちろん家具用に加工されておらず、まずは木を乾燥させることからゆっくり家具の開発は進んでいきました。
どんぐりの木は想像以上に硬く、乾燥すると「割れ」や「反り」の動きが大きく出るため、加工が本当に困難な木。なかなかうまくいかない状況が続くが、それでもめげずに村民とともチャレンジする、そうして「信頼関係」を築いていきながら開発を進めて実に3年、ついにひとつの椅子が完成したのです。

諸塚村の小学生たちと育む関係。

「この椅子を送り出すときは、自分の娘が嫁入りしていく気持ちになる」そんな言葉が、手がけた職人さんから思わず出てくるほどの思いがこもった椅子「MOROTSUKA」。
デザインは、かれこれ20年以上ワイス・ワイスのサポートをしてくださっている小泉誠さん。そして地元の建具職人、那須幸雄さん、諸塚村の林業家の皆さん、村民の皆さん、これら全ての人の間に立った一番の陰の功労者、村役場の矢房孝広さん。この皆さんとは今でもお互いを訪ね合う関係。また、特に大切にしているのは、諸塚村の小学生たちとの交流です。毎年夏になると小学生たちが東京のワイス・ワイスにやってきます。日本の森や世界の環境、そしてFSC®やトレーサビリティの本質的な意味や価値、そして本当の豊かさについて、互いに学んでいます。

矢房 孝広
Yabusa Takahiro

宮崎県諸塚村企画課長 兼 地方創生担当課長

諸塚村産直住宅の供給や、都市との交流による地域活性化及び、観光事業、地域資源開発に尽力。

morotsuka

硬いコナラが頑丈な骨格に。座面と背には空気を多く含む柔らかな杉を使い、やさしい肌触りと座り心地を実現。 2021年リニューアル。
Design: Koizumi Studio 小泉 誠

  • MOROTSUKA
    サイドチェア

    NS-101

  • MOROTSUKA
    アームチェア

    NS-102

  • MOROTSUKA
    スツール

    NS-103

  • MOROTSUKA
    ベンチ

    NS-104

  • MOROTSUKA
    ダイニングテーブル

    NS-105

被災地・宮城、栗駒山麓の杉の木。椅子材には不向きと言われる杉の木。この杉が「やさしい椅子」に姿を変え、そして、地元の「雇用」を生む。

Story Kurikoma

北東北のクリの木。「パルプチップ」にされ、高級トイレットペーパーになっていた。このクリの木をきっかけに、新生AKIは誕生した。

Story Aki

フェアウッド・プロダクツ

ワイス・ワイスのフェアウッドを使った家具は他にも様々あります。
椅子だけでなく、テーブルも、ソファの構造にも、
もちろんフェアウッドを使用しています。
使われている木のルーツ次第で、「座り心地」や「愛着の度合い」は
ずいぶん変わってきます。木は命であり、森は生命の源です。
豊かな日本の森や美しい世界の自然を想い、
長く使える暮らしの道具を心を込めて皆さまにお届けします。

フェアウッド・プロダクツ 一覧

さらに詳しくは、お気軽に。

お困りごと、ご相談、詳しいご質問等は、
問い合わせフォームをご利用ください。

お問い合わせ

Daily Information

日々の活動をご紹介します。
「自然と人」「人と人」の関係を丁寧に築いていくこと。
繋がりを大切にし、皆さまと共有します。