森 それぞれの地域を支えてきた、 森の多様性を取り戻す。

春 待ちわびた季節の到来に細胞が生き生きと働き出す。夏 太陽の光を浴びようと上へ上へと向かっていく。
秋 葉を落として眠りにつく準備をする。 冬 凍らないように水を止め、じっと春を待つ。
森
多様な日本の森、世界の森が人と自然の健全性を育む。

森は木材を生産するだけでなく、私たちの命も守り続けてきた。人間が生きてこられたのも森のおかげだ。

森の中に足を踏み入れると、木々がどっしりと根をおろし、土が落ち葉や枝で覆われていたり、草や小さな木が生えていたりと、多様な生命の世界の広がりに息をのむ。このように土がしっかりしているおかげで雨、が降っても土壌が浸食されて土砂が流れ出たり、崩壊したりすることから守ってくれる。また森に降った雨や雪は土壌にゆっくりゆっくり吸収されて川に流れ出るため、洪水や渇水を緩和してくれる。森林が〝緑のダム〟と呼ばれる所以である。さらに雨水が地中に浸透する過程で自然に浄化され、岩や石の間を通ってミネラル分を含むようになり、私たちにおいしい水を提供してくれる。

そして森林には陸上の動植物の8割が生息していると言われ、さまざまな生き物の営みがある。生物の多様性は里山でも豊かで、希少種が分布する地域の5割以上が里山に含まれている。このような森のさまざま役割を「森林の公益的機能」と呼び、2001年の試算によると年間70兆円にものぼるという。それ以上に生物多様性により遺伝子や生物種、生態系が保全される機能などは、貨幣価値には換算できない地球の財産である。

森の役割はこれだけにとどまらない。全国の森を訪ね歩いてきた内山節さんは、森は公益的機能といった一般的な表現では言い表せないほど、それぞれの地域と結びついた多様な役割を担っていたと著書『森にかよう道―知床から屋久島まで―』でつづっている。

「北海道の道東地方には、海から押し寄せてくる霧から農作物を守るための防霧林がある。そして、海岸林と内陸防風林の助けを借りて成立する北海道の農業。江戸時代にはじまり今日もなおつくられつづける日本海沿岸の松林も、防風林、飛砂防止林として沿岸の人々の暮らしを守っている。海ガメの産卵地としても知られる鹿児島の吹上浜も、広大な松林の造成がこの地域の農村社会を支えていた。漁民の暮らしを守る魚つき林、良好な漁業を営むために、山に広葉樹を植えている漁民たちもいる」

その土地の自然や歴史と関わりながら各地域で森がつくられてきたが、森の在り方を無視して、日本全国でスギ・ヒノキが大量に植林され、森林全体の4割を占めるまでになった。さらにこれらの木が生長して伐採の時期を迎えているが、輸入した安価な木材に押され、伐れない、手入れもできない状況に陥っている。しかも外材の利用が進むことで海外の豊かな自然と人々の暮らしを奪い、どちらにとっても不幸な状況を招いている。森との関係を結び直さなければ、日本の森も、世界の森も取り返しのつかない状況になる。