〆 木が育つ時間と同じ時間を、家具として過ごすために。 愛され、受け継がれていく家具としてのはじまり。

部材を組み上げる作業に入る。北海道旭川市の山岡木材工業でつくられる椅子「AKI」の場合、極限まで装飾を排除したデザインであるがゆえに、職人の技術力と経験が要求される。毎日の暮らしのなかで繰り返し使っても変わることのない強度を持ち合わせていなければ、〝暮らしの道具〟として成立しないからだ。木が育った年月と同じ、願わくはそれ以上の年月を経てもなお受け継がれる家具であるため、部材を木組み工法で組み立てる。木組みは日本の神社仏閣などに使われてきた伝統的な木工技術で、日本が世界に誇れる文化である。

部材にかんなややすり掛けなどが施され、下地調整が行われたのち、接合部分に接着剤を塗布して組む。端金という道具で固定し、ゆがみのない状態で接着剤が乾くまで養生させる。長い間使用し続けられるよう、バランスよく荷重を受ける厳密な精度が必要とされる。

そして仕上げの段階へ。

背柱と笠木の接合部などは、かんなや小刀、のみなどを使って職人の手で仕上げ、機械加工では出せない微妙なラインや手ざわりを生み出している。その境目を手で触れてみると段差がなく、まるでひと続きのようななめらかさ。これは「さすり仕上げ」と呼ばれ、手しごとでしか成し得ない技術である。

最終工程へ

いよいよ最終工程。家具に汚れがつくのを防ぎ、木目を引き立ててより美しい家具にするため、塗装の作業に入る。木の表面を樹脂で覆う石油系のウレタン塗装が主流であるが、ワイス・ワイスでは、亜麻仁油など植物性オイルを主成分にした「オイルフィニッシュ」をはじめ、地球への負荷が少なく、安心安全な自然塗装も選択できるようにした。オイルを塗り込むなど定期的なメンテナンスが必要になるが、これは生きている木と向き合う大切な時間。木の組織に染み込んで木を内側から保護してくれる自然の理にかなった塗装で、木が本来もっている質感、手ざわり、香りを味わうことができるからだ。

工房は木の粉が舞いやすい環境にあるので、塗装前にごみやほこりをよく落とし、刷毛でむらができないよう細心の注意でオイルを塗る。そして布で余分なオイルを拭き取った後、もう一度オイルを塗って全ての組織にオイルを浸透させてオイルのなじみをよくする。こうしてようやくいのちが吹き込まれ、道具としての椅子が誕生する。

何十人もの人の手を介し、長い年月を経て木は家具へと生まれ変わる。数十年かけて生長した木のいのちを大切に思い、さまざまな人のひたむきな心と手間をかけてつくられた家具。何世代にもわたって受け継がれ、人と森、人と人をつなぐ役割を果たせる存在となることを願いながら。


樹齢100年の木の家具を、100年使えるように。