材 育ってきた環境を離れ、木の第二の人生が始まる。
運 剥 切 乾
木が山から下ろされ、里の環境になじんでいく。

木を伐って30年以上という木こりでも、木を伐るときは「気は抜けない」と言う。50年、60年と長い時間をかけて育った木が、わずか数分で伐り落とされる現場に立つと、自然と厳かな気持ちになってくる。そして伐り方を間違えれば自分の方に向かってくることもあり、倒し方をよみ間違えれば木を傷つけ、周囲の木も一緒に倒されて大きな事故にもつながる。木を伐る現場は命がけである。

木は昔、筏を組んで川を下り、貯木場へと運ばれたが、今では道がつくられてトラックが山奥まで入って来られるようになった。重機で数十キロ、数百キロある木を山から下ろし、トラックに積む。時には山に道をつくり、クローラーがついた運搬車で道路まで運び出さなければならない。そして原木市場や製材所へと運ばれていく。

製材所では樹種ごとにまとめて保管され、ある程度の量がまとまると、製材作業に入る。秋田県仙北市で約20種類の国産広葉樹を専門に扱う田鉄産業の田口宗平さんは、「広葉樹は手間がかかり、神経を使う」と話す。冬の間は木が水分を吸うのを止めて養分を蓄えているため、しばらく置いても問題はないが、夏になると木にしみが入ったり虫がついたりしてしまい、時間との勝負になってくる。早く製材しなければ、せっかく数十年とかけて育った木の価値が下がってしまう。

機械の轟音が鳴り響くなか、木を転がしながら皮をむく。そうして段々と角材や板材になっていく。ここで問われるのは、木のよみ方。挽き方で木目も木の性質の出やすさも変わり、加工にも影響が出てくる。木の状態や節や相をよみ、その後も木が生きるように挽くことが求められるのだ。

製材を終えた木は、乾燥の時間に入る。風通しをよくするために桟をはさんで積み上げ、屋外で自然に乾燥させて含水率をゆっくりと下げながら出荷の出番を待つ。昔のすきま風が吹く家屋と違い、現代の気密性の高い住宅環境にさらされても木が耐えられるよう、家具にする場合は最終工程で人工的に乾燥させて含水率を10%ほどにする。同じ広葉樹でも水っぽい木もあればそうでない木もあり、天然乾燥させた期間によっても、樹種、材の厚みや幅によっても乾燥方法や時間が違ってくる。

「経験を重ねて、木をよむ力がないとできない。そういう人が少なくなってきています」と田口さん。国産材を扱える人がいなければ、国産材で家具をつくることはできない。

乾燥を終えて養生させた後、再びトラックに載せられて家具の製作現場へ運ばれる。木が生長するまでの時間も相当だが、伐り出してから家具に加工できる状態になるまでにも数か月から数年単位の時間がかかるのである。