アバンティ渡邊智惠子社長に聞く すべての命を大切に、「使い捨て」から「使い切り」へ


WISE・WISEの社長が聞く VOL.4
1990年にオーガニックコットン(無農薬有機栽培綿)の輸入を開始し、オリジナルブランドを立ち上げるなど、オーガニックコットンを日本に広めてきたアバンティ(東京・新宿)・渡邊智惠子社長。2月には、一般財団法人森から海へ(東京・新宿)を設立し、持続可能な社会の実現に向けて、新たなステージへ踏み出しました。


■商品の命を長くするのは企業の責任

佐藤:食べ物や洋服、家具の「ファスト化」が進み、残念ながら、日本人に使い捨てが習慣化しています。ワイス・ワイスでは、モノを大切にし、ほんとうの豊かさをお客さまに提案、お届けしたいと考えています。

渡邊:私は30年前にアバンティを創業し、1990年にオーガニックコットンの輸入を開始しました。1996年にはオリジナルブランド「プリスティン」を立ち上げ、日本製であることや無染色にこだわりながら、レディースウェアやアンダーウェア、寝具などの製造・販売を行っています。
モノというのは、その原料だけでなく、時間や人の手間、伝統技術などすべてがからみあって出来ているのです。ですから、モノづくり企業には、商品の「命」をできるだけ長くする責任があります。
例えば当社では、「商品を可愛がってほしい」という思いを込めて、自宅でも簡単に染められる染料をお客様にプレゼントしていました。プリスティンの製品は生成りの風合いが特徴ですが、ちょっとした汚れが目立ちやすい。汚れがあると、大切に使わなくなってしまう。生成りの生地を好きな色に染めると、商品が生き返るのです。
それが4年ほど前に、アップサイクル&リサイクルの取り組み「リプリプロジェクト」に発展しました。このプロジェクトでは、小さな刺繍を施すお直し、植物染料での染め替え、リユース、繊維にほぐして再利用する――といったサービスを提供しています。

佐藤:長く使ってもらいたいという思いは、ワイス・ワイスも同じです。2009年に「グリーンプロジェクト」を立ち上げましたが、その根幹にあるのは、「長期使用へのこだわり」です。
日本工業規格(JIS規格)という基準があるのですが、当社では3倍の強度を保つ家具づくりに取り組んでいます。2014年には「家具メンテナンスワークショップ」を開始しました。オイルを塗るだけでも、家具は味わい深く変化していきます。日常のお手入れをお客様自身にして頂くことで、愛情を込めて長く使用して頂きたいのです。
一方、家具業界を見渡せば、大量生産型の安価な外国産家具が増え、全体の質が落ちています。それに伴い、JIS規格の基準も低くなってしまっているのが現状です。これでは、国内の産業が衰退してしまう。危機感を抱いています。

渡邉:「モノ」は単なる「モノ」ではなく、意志があり、生かしてくれる人のもとに集まります。手をかけた分だけ、生き返るのです。
こうした企業の取り組みは、社員の誇りにもつながると思います。アバンティを興した当初、目指していたのは、社員の子どもが入りたいと思ってくれるような会社にすることでした。そして、社員が誇りを持って働くこと。権限はなるべく委譲し、いろんな経験をさせたいと考えています。

■統合的に森を学べる場づくり

佐藤:渡邊さんが2月に立ち上げた財団では、森を守る活動をされるそうですね。森は木材を生産するといった経済的な価値だけでなく、生物多様性の保全や水源のかん養といった多様な価値を持っています。

渡邊:そうですね。地球、人間、すべての命の源は森にあります。森がなければ水もなくなりますし、水がなければ食物は育たない。しかし、これまでは林業なら林業、生態学なら生態学と、森に関して統合的に学べる場はありませんでした。一般財団法人森から海へでは、森を守る人間を育てていきたいのです。
また、温暖化の影響で自然淘汰されなくなり、森林の鳥獣被害は年々深刻になっています。そこで、ジビエ(野生鳥獣の食肉)の出口づくりにも力を入れていきます。鹿を狩猟しても、その2割程度しかジビエ料理に使われず、残りは捨てられてしまうそうです。
現在、ジビエを使った完全オーガニックのペットフードの商品開発を行っていますが、大事な命をきちんと「使い切る」という意識で取り組んでいきたい。 
こうした出口づくりには、これまでの経営者としての経験やネットワークが生かされてくると思います。まだまだ立ち上げたばかりの財団ですが、もっと多くの協力を得て、活動を広げていきたいです。

佐藤:森の喪失は、文明の喪失でもあるといわれています。渡邉さんはラジオ番組「22世紀に残すもの」で、様々な方と対談されていますが、渡邉さんが「22世紀に残したいもの」は何でしょうか。

渡邉:少し大げさに聞こえるかもしれませんが、やはり「愛」ですね。私は、母が子を思う気持ちから、すべてがスタートすると考えています。アバンティも森から海へも同じです。
貧困から戦争が起きたり、世界にはまだたくさんの問題があります。「命」とは何か、「生きる原点」は何か、考えながら、これからも活動し続けたいです。

アバンティ渡邊智惠子社長に聞く
渡邊智惠子
北海道斜里郡出身。1975年明治大学商学部卒業後、㈱タスコジャパンを経て、1985年㈱アバンティを設立。1993年日本テキサスオーガニックコットン協会(現NPO法人日本オーガニックコットン協会の前進)を設立し理事長に就任。2008年「毎日ファッション大賞」、2009年経済産業省「日本を代表するソーシャルビジネス55選」に選ばれる。2011年東日本大震災に際し、「東北グランマの仕事づくり」「わくわくのびのびえこども塾」等の活動をしている。

- 2016年03月10日