技 受け継ぎ、磨き上げてきた技で、再び木にいのちを注ぐ。
断 木目の表情、節の位置を見極め、無駄を出さないよう部材を取る。 削 理想的な湾曲を生み出すため、手づくりの型を当てて削り出す。
掘材同士を正確につなぐために、穴の位置、角度に意識を集中させる。 磨 繊細な力加減が仕上がりを左右する、長年の経験を要する職人の技。
技
職人の技と木の魂が呼応し、木にいのちが吹き込まれる。

木の家具や道具が私たちの毎日の生活を支えてくれるのは、日本全国にものづくりにいそしむ職人たちがいるからに他ならない。来る日も来る日も木と向き合い、これまで積み上げてきた技術を駆使してこそ、木のある心地よい暮らしを可能にしてくれる。

自分たちよりも長い時間を生き続けてきた木のいのちと引き換えに、家具が生み出される。ワイス・ワイスのものづくりを支える工房のひとつ、北海道旭川市の山岡木材工業で働く伊藤直紀さんは、

「切り出した木材から家具の部材を取る木取りは、経験を積んだ者にしかできない作業。特に節が表に出ることを避けつつも、材を無駄にしないよう木を見極めなければいけない。これができるようになるには、かなりの年月を必要とします」

と話す。家具になったときの木の表情を頭のなかで思い描き、木目の出方や節の位置を何度も確認しながら、部材を取る。人々から愛され、永く使われる家具となるように願いながら。

木を直線的に切り出し、背、座面、脚をつなげて椅子をつくることもできる。しかし単純な作業から生まれる椅子は重たく武骨な表情で、今の生活にはなじみにくいこともある。そこで、私たちとともに人生を歩む家具として木に新しいいのちを吹き込むのに必要なのは、永く使い続けられるデザインと職人の技。豊かな気持ちをもたらす佇まいでありながら、座り心地がよく、立ったり座ったり、移動させたりとさまざまな動きをしても変わらずにあり続ける強度を持ち合わせているなど、あらゆる条件を満たす、高度なものづくりが求められる。

そしてデザインする者と現場の職人とが連携することも、家具づくりには欠かせない。理想とする姿を図面から読み取ってかたちにしながら、現実的な条件を整えなければ、家具として完成しないからだ。例えば椅子の背から脚にかけての微妙なラインひとつにしてもその加減で表情も強度も変わってくる。デザイナーと職人が信頼関係を築いて何度もやり取りすることで最終的なデザインが決定し、生産に向けて部材づくりが始まる。

装飾を極限まで省いた椅子「AKI」をつくるにしても、17個の部材を必要とする。部材ごとに手づくりした型に木を当ててひとつずつ削り出し、接合部の加工を施して、表面をなめらかに磨き上げる。一日中機械が動く音が鳴り響く工房で、真っ直ぐな思いで手を動かす職人たち。ひとつの部材の長さ、幅、厚み、穴の位置、削り出しの角度とどれをとっても寸分の狂いがなく、部材だけを見ていても芸術作品を見ているような仕上がりだ。そうでなければ、組み立てたときに調和を失い、家具として成立することができない。 持っている技の全てを出して、自分に与えられた使命を果たす。そんな妥協を知らない職人の手を何度も経て、家具になるための部材が出来上がる。